呼吸用保護具とは
火災等の災害現場において、濃煙、有毒ガス等の充満した場所又は、酸素欠乏の場所等に進入し、消防活動や救助活動を行う場合に、呼吸に必要な空気を供給するための器具である。
ろ過式呼吸保護具とは
空気中の浮遊粉塵を捕集する防塵マスクと、有毒ガス、蒸気、煙などを捕集する防毒マスクとがある。
操作が簡単であるが、酸素欠乏環境や対象ガスの種類が不明の場合には使用できない等、消防活動での使用範囲が限られるため、あまり使用しない。
防じんマスク
肺力によって吸引した環境空気中の粉じん、ヒューム、ミストなどの粒子状物質をろ過材によって除去する呼吸用保護具。取替え式と使い捨て式とがある。
液体粒子又は固体粒子で試験したときの性能によって、それぞれ3種類（捕集効率80%以上、95%以上及び99.9%以上）に区分される。吸気補助具付き防じんマスクは、防じんマスクと同等以上の性能をもつものであり、呼吸も楽である。
取替え式は、直結式と隔離式とに分けられる。
電動ファン付き呼吸用保護具（PAPR）
電動ファン、フィルタ、面体等、その他からなり、環境空気中の有害物質を除去した空気を着用者へ供給する呼吸用保護具。
面体等の内部が常に陽圧になるように設計された標準形は、高い防護性能が得られる。
防毒マスク
肺力によって吸収缶を通して吸引した環境空気中の有毒ガスなどを吸収缶によって除去する呼吸用保護具。直結式小型、直結式及び隔離式の3種類がある。
防じんマスクと同等の防じん機能をもつものもある。
（写真は直結小型式）
送気マスク
給気源からの清浄な空気をホース又は中圧ホース及び面体等を通じ、着用者に供給する方式の呼吸用保護具。
空気呼吸器
開放式呼吸器のうち、高圧空気容器を使用しているもの。デマンド形及びプレッシャデマンド形がある。
高圧空気容器への最高充てん（填）圧力は、14.7MPa及び29.4MPaである。
循環式呼吸器
圧縮酸素形循環式呼吸器
着用者の呼気中の二酸化炭素を清浄缶によって吸収し、高圧酸素容器から酸素を補給して、着用者に閉鎖循環式に 給気する自給式呼吸器。陽圧形と陰圧形とがある。酸素発生形循環式呼吸器
循環式呼吸器のうち、酸素発生缶によって酸素を供給又は補給する方式のもの。
化学薬品の反応によって酸素を連続的に発生させる方式（塩化ナトリウム形：C型）、及び化学薬品に呼気を通して 呼気中の水分と化学薬品の反応によって酸素を発生させる方式（超酸化カリウム形：K型）がある。
空気呼吸器は、ボンベ内の圧縮空気を減圧弁を通して減圧し、面体に供給するもので、呼気は呼気弁を通してそのまま外気に放出する呼吸器である。空気呼吸器には、着装者の呼吸量に応じて空気を供給するデマンド形と面体内を常時正圧に保つ機構をもったプレッシャデマンド形とがある。
デマンド形とプレッシャデマンド形
デマンド形
デマンド型は息を吸い込むときに、面体内が負圧になってボンベから空気が送られるもので、プレッシャデマンド型とは面体内が常に陽圧（外気よりも高い気圧）になっているものです。 デマンド形空気呼吸器は、着用者の吸気に合わせて空気が供給され、吸気を停止した時及び呼気の時（面体内が外気と同圧又は陽圧のとき）には供給を停止する機能を備えています。
プレッシャデマンド型
プレッシャデマンド型は面体と顔の間に多少隙間があっても面体内部が揚圧のため外部から煙やガスが進入しにくいといったメリットがあります。
プレッシャデマンド形はデマンド形に加えて、面体内の圧力を常に外気より陽圧にする機能を備えており、面体と顔の間に多少のすき間ができた場合にも、有害な外気の浸入を防ぐことができます。現在は、安全性の高いプレッシャデマンド形が多く使用されています。
プレッシャデマンド形呼吸器の構造は、ボンベからの高圧空気を減圧弁で中圧(4.5～0.7Mpa)に減圧し、さらにプレッシャデマンド形弁で呼吸できる圧力に減圧します。ボンベの最高充てん圧力は29.4MPaと14.7MPaの2種類があります。
構造及び機能
１、調整器
減圧弁、供給弁、警報機、バイパス弁及び圧力指示計等から構成され、高圧空気を大気圧付近まで減圧する装置。
・減圧弁
高圧空気を約０.６Mpa（中圧空気）に減圧する装置。
・供給弁
着装者の吸気・呼気の変化に応じて、所要の量の空気を面体へ送り出すための弁で、従来肺力弁と呼称されていたが、現在ではデマンド弁とプレッシャー弁の２種類があり、これらを総称して供給弁と言っている。
・中圧ホース
減圧弁からプレッシャデマンド弁に中圧空気を通す耐圧ホース。
・プレッシャデマンド弁
中圧空気を大気圧付近まで減圧し、かつ、面体内の圧力を陽圧に保つプレッシャデマンド機能と、着装後の最初の吸気で面体内の圧力を陽圧に切り替える自動陽圧機能を持った弁で、呼吸に応じて作動する。
・吸気弁
呼気した時に開き、吸気した時に閉じる弁。
面体のノーズカップに取り付けられており、吸気の時開き、呼気の時閉じるゴム製逆止弁。
・呼気弁
面体下部に取り付けられており、微弱な呼吸にも鋭敏・確実に応答して呼気を外部に排出するためのゴム製逆止弁で、呼気の時のみ外気に通じる唯一の開口部。
・陽圧ロックレバー
プレッシャデマンド機能をOFFにするためのレバー
・バイパス弁（手動補給弁）
使用中にプレッシャデマンド弁が故障した場合に、減圧弁側の空気をプレッシャデマンド弁を経由しないで直接供給するための手動弁で、また、点検、使用後に機械内の圧力を逃すためにも使用する。面体の曇りの除去としも使用。
・中圧安全弁
中圧が設定圧力以上になった時、空気を放出することにより圧力の上昇を防ぎ機器を保護する安全装置。
・警報器
ボンベ圧力が始動設定圧力（標準は３Mpa）に減少した時に、警報音が鳴る。
・圧力指示計導気管
圧力指示計及び警報器に高圧空気を導くための耐圧ホース
・そく止弁
ボンベに付属する開閉用の弁。
・呼吸の仕方
浅く早い呼吸は、肺のガス交換率を下げてしまい、呼吸回数が増えボンベ内の空気消費量を増やすことになる。
深くゆっくりとした呼吸をすると活動時間を延ばすことができる。
体力不足、経験不足や不安は極度の緊張をもたらし、呼吸を浅く早くして空気消費量を増やす要因となる。
